香りマーケティングとは?日本のアロマ市場や3つの成功事例も解説

コラム

昨今注目され、さまざまな企業が導入している新たな取り組みがあります。それが、マーケティングに「香り」を活用した「香りマーケティング」です。香りマーケティングは新しさを提供し五感を刺激できることから、消費者の目に止まりやすいのが特徴といえます。また、ブランド価値を高める効果も期待できます。

 

この記事では、そんな香りマーケティングの概要や効果を解説します。また、導入している企業の成功事例についてもご紹介していきます。

香りマーケティングとは?プルースト効果、ブランドセントの意味は?

まずは「香りマーケティング」とはなにか、その概要と得られる効果について解説していきましょう。また、香りマーケティングに欠かせない「ブランドセント」についても説明していきます。

 

香りマーケティングとは香りの活用によってマーケティング活動を行い、新たな価値を創造する活動

香りマーケティングとは、香りを活用した企業戦略のことを指します。香りマーケテイング協会の定義としては「企業活動において、香りを利用し活かすことによってマーケティング活動を実施し、新たな価値を創造する活動やプロセス」と定めています。

 

昨今ではたくさんの商品やサービスがあり、従来の視覚や聴覚に訴えるマーケティングでは情報が埋もれてしまい、消費者の印象に残りづらくなることがあります。そこで嗅覚を刺激する香りをマーケティングに用いることで、他社との差別化を図り、新たな価値を見出すことができるのです。
関連リンク:https://www.advance1997.co.jp/kaori/column/colum-141/

 

プルースト効果とはある特定の匂いがそれにまつわる記憶を誘発する現象のこと

香りマーケティングでは「プルースト効果」という現象を活用します。このプルースト効果とは、ある特定の匂いを嗅ぐことにより、匂いとともにそれに関連する記憶や気持ちを呼び覚ます現象のことです。たとえば、プルースト効果には次のようなものがあります。

 

・夕飯時にどこからか漂ってくるカレーの香りに、幼少期の夕暮れを思い出す。
・人とすれ違ったときにふわりと香る香水の匂いで、かつての恋人を思い出す。
・蚊取り線香の匂いで、夏休みや祖父母の家を思い出す。

 

このプルースト効果を香りマーケティングで活用することで、消費者や顧客に強い印象を与えたり、商品イメージやブランドイメージを統一させることができます。

 

ブランドセントとは企業が自社のイメージに合わせて開発する香りのこと

近年、香りマーケティングのために誕生した概念が「ブランドセント」です。

 

ブランドセントとは、企業やショップが自社のブランドイメージに基づき、独自に開発した香りのことをいいます。このブランドセントが消費者や顧客の嗅覚に触れることで、商品やブランドを思い出してもらえるきっかけになり、感情的な部分に訴求することができるのがポイントです。

 

ブランドセントを用いたマーケティング手法の流れは次のとおりです。

 

香りを導入する
店内BGMやロゴなどなどと合わせたブランドイメージの香りを調合し、店舗や会社でお客さまに嗅いでもらう。
 ↓
香りを定着させる
二度目の来店・来社のときに導入した香りを記憶してもらい、ブランドイメージの要素として定着させる。
 ↓
香りを商品化する
ブランドの香りを商品化し、その香りに接する機会を作る。
 ↓
香りを記憶する
さらに香りを記憶してもらうために、お店や会社以外の場所でもブランドの香りを感じられるようにし、記憶してもらう。
 ↓
香りの連鎖
商品化したブランドの香りを身につけた顧客を通じて、今までブランドのことを知らない顧客にアピールし、さらなる売上につなげる。
 ↓
香りの拡散
SNSなどを活用し、口コミなどで拡散されることで、さらなる新しい効果を発揮する。

日本における香り・アロマの市場規模

香りマーケティングについて市場規模を示す明確なデータはありませんが、参考となるのが公益社団法人日本アロマ環境協会が発表した「アロマ市場に関する調査レポート」です。

 

同協会が発表した「2021年アロマ市場に関する調査レポート」によると、2021年のアロマ市場規模は約3,973億円でした。内訳としては、アロマテラピー製品・サービス等が460億円、精油を配合した製品等が3,513億円と推計されています。

 

この数字は、前回の2018年の調査とくらべて112%拡大しており、年々拡大する傾向にあります。このことから今後も香りを使ったマーケティングが広まる可能性は高く、市場規模が拡大することが予想できます。
用いるデータは以下のリンクを参照し、2021年度のものを引用してください。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000125.000005249.html

香りマーケティングの活用による4つの効果

香りマーケティングを活用することで見込める効果には、
・ブランディングに役立つ
・顧客が満足できる体験を提供できる
・購買意欲を高める
・働く人のモチベーションアップ
などがあります。それぞれの効果を詳しく解説していきましょう。

 

効果①ブランディングに役立つ

ブランディングとは、ブランドを形作るためのさまざまな活動を意味する言葉です。このブランディングに香りを活用することができます。とくに意識するのは次のようなことです。

 

・ブランドコンセプト
・商品のイメージ
・どんな価値を提供したいか(実利価値、完成価値、情緒価値、共鳴価値)
・ターゲット層
・生活背景
・使用するシーン

 

これらはマーケティングで意識することと同じです。これらのイメージを固めて、ブランドセントを調香師とともに決めていきます。ブランドセントが決まれば、店舗で香りを使ったり、名刺やショップカードに使ったりすることで、顧客の購買意欲につなげることができます。いわば香りが、営業効果を発揮するのです。

 

効果②顧客が満足できる体験を提供できる

顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客やユーザーが企業の商品・サービスに興味を持ち、その商品・サービスを利用するまでの一連の体験のことを指します。この顧客体験に香りマーケティングを取り入れることで、顧客にとって好ましい香りである場合には滞在時間が長くなり、購買意欲も高まったというデータがあります。これは、居心地の良さや楽しさを香りによって提供することができているという証拠です。

 

香りをマーケティングに使うことで、店舗や商品に対する顧客満足体験を高めることにつながり、ひいては顧客満足度(カスタマー・サティスファクション、企業の商品やサービスに対して顧客がどの程度満足しているのかの度合い)をアップさせることができるのです。

 

効果③顧客の購買意欲を高める

香りには、購買意欲を高める効果があるといわれています。たとえばパン屋の前を通りかかったときに、焼き立てのパンの香りにつられてお店に入ってしまうということです。こうした体験も、香りマーケティングのひとつです。これは、食べ物を販売するお店だけに限りません。化粧品の香りの場合、その人にとって好ましい香りと感じれば、きれいなイメージが生まれたり、美しくなることへの高揚感やリラックスする効果が生まれたりします。またお店などの空間に香りを取り入れれば、高級感や清潔感、季節などを演出することも可能です。

 

そのほか、香りには無意識にリラックスさせる効果があるともいわれています。空間に香りを活用することで、滞在時間が長くなる効果も期待できます。
ただし、香りはターゲット層やブランドイメージに合ったものを選ぶことが重要です。

 

効果④働く人のモチベーションアップ

香りマーケティングは顧客や消費者だけでなく、香りマーケティングを取り入れている企業で働く人にもメリットがあります。これは心地いい香りを嗅ぐことが感情に直結し、生理機能に影響を与えるためです。興奮の抑制や鎮静、集中、ストレス緩和、リラックス効果、気分転換などの効果が得られ、仕事のモチベーションをアップすることができるでしょう。

香りマーケティングによる3つの成功事例

ここでは、香りマーケティングを導入した成功事例を3つご紹介します。
・株式会社フジクラ
・エレメンツ社労士事務所
・トヨタ自動車

 

成功事例①株式会社フジクラ

株式会社フジクラでは、オープンイノベーション施設「BRIDGE」のオリジナルアロマによる空間演出と、社員の名刺にアロマを賦香する取り組みを実施しています。

 

コンセプトアロマ「BRIDGE」は、爽やかな柚子をベースとしたシトラスノートに、緑豊かな森林系やハーブ系の香りが調和し、和モダンの香りなのだそう。この香りは、脳波測定による香りを嗅いだ人の興味や関心の向上が期待される波形の観測結果や、香りの嗜好性も加味してつくられているといいます。

 

導入のきっかけとなったのは、さまざまな人々と価値共創を実現していく上で、繋がりを強めるための方策を模索していたところ、香りのスタートアップ企業と出会い、香りの可能性に着目したことからだそうです。

 

受付にディフューザーを設置したテストマーケティングの際には「同じ香りのストーリーを共有すると仲間意識が高まる」「良いコミュニケーションにつながる」「リラックスして仕事
ができる」などの声が挙がっています。

 

成功事例②エレメンツ社労士事務所

エレメンツ社労士事務所では、香りがついた名刺を使用しています。これは香り印刷とよばれる印刷技術で、インキに香り成分を閉じ込めたカプセルが含有されており、名刺から香りが出るようになっています。

 

香りがついた名刺のメリットには、
・ほかの企業の名刺との差別化ができる
・初対面の方との会話の切り口になる
・相手に好印象をあたえらることができる
・プルースト効果が期待できる
などがあります。香り印刷の名刺なら、比較的簡単に導入することができそうです。また、この香り印刷をショップカードやDMなどに活用することもできます。

 

成功事例③トヨタ自動車

トヨタ自動車が展開している高級車ブランド(プレミアムブランド)の「LEXUS」。こちらのショールームでは、香りで「おもてなし空間」を演出しています。春はフラワー、夏はミント、秋はハーブ、冬はウッドという具合に、四季に応じたフレグランスを活用しているのが特徴です。

 

高級ブランド車としてのラグジュアリー感や、やすらぎ、リラックス効果を感じることができるのはもちろん、香りで季節を感じることもできます。

 

なお、こちらのアロマは「レクサスコレクション」というレクサス販売店で購入できるオリジナル商品となっています。商品には、アロマスプレー、アロマオイル、ルームフレグランスがあります。

まとめ

香りマーケティングは、企業の新たなマーケティング方法のひとつとしてさらなる発展が予想されます。活用することで競合他社との差別化ができ、自社ブランドのイメージアップ、ブランディング強化につながるのがメリットです。香りマーケティングの実用例はさまざまなものがありますが、香り印刷なら名刺やショップカード、DMなどで導入しやすいでしょう。自社に合ったよりよい活用方法で実施し、販売促進や宣伝効果、売上アップを目指しましょう。

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